ある晴れた日のこと。
可愛い赤ずきんをかぶった、スラリと背の高い素敵な人が、早朝の森を歩いていた。
左手にはバスケットを下げ、右手には木の杖をついて、デコボコ道を颯爽と行く。
「おはよう、赤ずきんちゃん!」
「誰だ?なぜその名前を知っている!?」
そこへ人狼の少年が後ろから声をかけた。
薄茶色のふわふわした髪に、くっきりとした二重の黒い瞳。
頭にはかわいらしいケモ耳が、ぴょこんと立っている。
もふもふの尻尾も、ふりふりしてかなり人懐っこい。
なのにそんな可愛い系のイケメンが出てきても、赤ずきんちゃんはまったく慌てない。
声のした方向に振り向くや、素速く持っていた仕込み杖から刀を抜く。
「わわ!何で女の子がそんな物騒な物持ってるの!?」
人狼はびっくり!
冷や汗をかきながらうろたえた。
「人狼の出る森に丸腰で来いと?それより答えろ!私の娘の名前を誰から聞いた!?」
「どこからどう見ても赤ずきんちゃんでしょう?赤いずきんをかぶってんだから!え?違うの?男の人?」
「ふん!一応、筋は通るな。だが、残念だ。私は赤ずきんの父だ」
赤ずきんちゃんのお父さんは、刀を鞘に収めると、得意気にアンダーリムの眼鏡を中指でクイッ!と持ち上げた。
「赤ずきんちゃんのお父さん!なんだって赤いずきんなんかかぶって、紛らわしい格好をしてるんですか!?」
「初対面の人狼にお父さんと呼ばれる筋合いはない!だが、せっかくの質問に親切に答えてやろう。情熱の赤は我が家のシンボルカラー!そして赤いずきんは森の中で迷子になって遭難しても、すぐに捜索隊に見つけてもらえる目立つ服装だからだ!」
「ええッ?赤ずきんちゃんのパパ様、迷子になったの?」
人狼は眼鏡と赤ずきん姿のパパを、気の毒そうに見つめた。
「この森に来たのは初めてだ。仕方ない。実は愛娘の赤ずきんちゃんが森に出掛けてひと月も帰らない。心配して探しに来てみれば早速、人狼が出た。貴様か!『ヘイ!彼女!おいらの、もふもふ毛皮、キミのハートに、捧げるぜ!oh!イエー!!』などと、軽佻薄な態度で娘をたぶらかした悪い狼というのは!?」
「うわッ!パパ様、腰を落として仕込み杖を抜こうとしないで!軽挙妄動は慎んで!なんでボクが毛皮を脱がなきゃいけないんですか!?そんなラッパーみたいなナンパはしませんよ!そ、それは別の狼です!ボクは心優しい13歳の健全な人狼です!悪い狼なら、とっくに猟師に退治されましたよ!」
可哀想な人狼は、半ベソになりながら必死で説明した。
「オオカミは群れで行動するというが、君は友達がいないのかね?」
「パパ様こそ、初対面からグイグイきますね?ボクは悪い仲間とは一切、手を切った、一匹狼(ローンウルフ)なんですよ!」
「なんか格好いいコト言うな。35年ローンを抱えた狼なら納得だが、まあいい。その噂なら聞いた覚えがある。そうか、君は良い狼か?飛んで火に入る夏の虫だ。ちょうどいい、森の中を案内してくれ」
「あの!例えが間違ってません?それを言うなら、渡りに船でしょ!?」
青ざめてぷるぷる震える狼くんには一切構わず、赤ずきんパパは、腰だめの姿勢からすっくと立ち上がると、陽気に人狼少年にお願いした。
「ああ、なんか厄介な人に関わっちゃったな……。赤ずきんちゃんだったら、サインもらって握手してもらって一緒に写真撮影して、SNSで匂わせしようと思ってたのにぃ~!」
狼くんは地団駄を踏んで悔しがる。
「うん?赤ずきんちゃんがどうした?」
「いえ!赤ずきんちゃんはとっても優しくて怪我した森の動物の手当てをしてくれてるんです!だから、動物たちにも大人気で!それに赤ずきんちゃんが森に来たのも、病気のおばあちゃんのお見舞いでしたよね?」
【赤ずきんちゃん】という単語に敏感に反応するパパに、狼くんはまたもや汗だくになって説明した。
「何!?おばあちゃんが病気?そんな話は赤ずきんちゃんから聞いていないぞ!そうか……この父を心配させまいと、なんと健気な……。くッ!こうしてはおれん!狼くん!今すぐ私をおばあちゃんの家に連れて行ってくれ!私も見舞いに行かねば!」
こうして、赤ずきんパパは無理やり狼くんを先頭に立てて、おばあちゃんの家まで道案内させた。
可愛い赤ずきんをかぶった、スラリと背の高い素敵な人が、早朝の森を歩いていた。
左手にはバスケットを下げ、右手には木の杖をついて、デコボコ道を颯爽と行く。
「おはよう、赤ずきんちゃん!」
「誰だ?なぜその名前を知っている!?」
そこへ人狼の少年が後ろから声をかけた。
薄茶色のふわふわした髪に、くっきりとした二重の黒い瞳。
頭にはかわいらしいケモ耳が、ぴょこんと立っている。
もふもふの尻尾も、ふりふりしてかなり人懐っこい。
なのにそんな可愛い系のイケメンが出てきても、赤ずきんちゃんはまったく慌てない。
声のした方向に振り向くや、素速く持っていた仕込み杖から刀を抜く。
「わわ!何で女の子がそんな物騒な物持ってるの!?」
人狼はびっくり!
冷や汗をかきながらうろたえた。
「人狼の出る森に丸腰で来いと?それより答えろ!私の娘の名前を誰から聞いた!?」
「どこからどう見ても赤ずきんちゃんでしょう?赤いずきんをかぶってんだから!え?違うの?男の人?」
「ふん!一応、筋は通るな。だが、残念だ。私は赤ずきんの父だ」
赤ずきんちゃんのお父さんは、刀を鞘に収めると、得意気にアンダーリムの眼鏡を中指でクイッ!と持ち上げた。
「赤ずきんちゃんのお父さん!なんだって赤いずきんなんかかぶって、紛らわしい格好をしてるんですか!?」
「初対面の人狼にお父さんと呼ばれる筋合いはない!だが、せっかくの質問に親切に答えてやろう。情熱の赤は我が家のシンボルカラー!そして赤いずきんは森の中で迷子になって遭難しても、すぐに捜索隊に見つけてもらえる目立つ服装だからだ!」
「ええッ?赤ずきんちゃんのパパ様、迷子になったの?」
人狼は眼鏡と赤ずきん姿のパパを、気の毒そうに見つめた。
「この森に来たのは初めてだ。仕方ない。実は愛娘の赤ずきんちゃんが森に出掛けてひと月も帰らない。心配して探しに来てみれば早速、人狼が出た。貴様か!『ヘイ!彼女!おいらの、もふもふ毛皮、キミのハートに、捧げるぜ!oh!イエー!!』などと、軽佻薄な態度で娘をたぶらかした悪い狼というのは!?」
「うわッ!パパ様、腰を落として仕込み杖を抜こうとしないで!軽挙妄動は慎んで!なんでボクが毛皮を脱がなきゃいけないんですか!?そんなラッパーみたいなナンパはしませんよ!そ、それは別の狼です!ボクは心優しい13歳の健全な人狼です!悪い狼なら、とっくに猟師に退治されましたよ!」
可哀想な人狼は、半ベソになりながら必死で説明した。
「オオカミは群れで行動するというが、君は友達がいないのかね?」
「パパ様こそ、初対面からグイグイきますね?ボクは悪い仲間とは一切、手を切った、一匹狼(ローンウルフ)なんですよ!」
「なんか格好いいコト言うな。35年ローンを抱えた狼なら納得だが、まあいい。その噂なら聞いた覚えがある。そうか、君は良い狼か?飛んで火に入る夏の虫だ。ちょうどいい、森の中を案内してくれ」
「あの!例えが間違ってません?それを言うなら、渡りに船でしょ!?」
青ざめてぷるぷる震える狼くんには一切構わず、赤ずきんパパは、腰だめの姿勢からすっくと立ち上がると、陽気に人狼少年にお願いした。
「ああ、なんか厄介な人に関わっちゃったな……。赤ずきんちゃんだったら、サインもらって握手してもらって一緒に写真撮影して、SNSで匂わせしようと思ってたのにぃ~!」
狼くんは地団駄を踏んで悔しがる。
「うん?赤ずきんちゃんがどうした?」
「いえ!赤ずきんちゃんはとっても優しくて怪我した森の動物の手当てをしてくれてるんです!だから、動物たちにも大人気で!それに赤ずきんちゃんが森に来たのも、病気のおばあちゃんのお見舞いでしたよね?」
【赤ずきんちゃん】という単語に敏感に反応するパパに、狼くんはまたもや汗だくになって説明した。
「何!?おばあちゃんが病気?そんな話は赤ずきんちゃんから聞いていないぞ!そうか……この父を心配させまいと、なんと健気な……。くッ!こうしてはおれん!狼くん!今すぐ私をおばあちゃんの家に連れて行ってくれ!私も見舞いに行かねば!」
こうして、赤ずきんパパは無理やり狼くんを先頭に立てて、おばあちゃんの家まで道案内させた。



