図書室へ行くと、目的の人物は意外とすぐに見つかった。
先輩は料理本のコーナーで、数冊の本を広げていた。そのうちの一冊には、『キャラ弁入門』というタイトルが見えた。
「なるほど。卵に少し片栗粉を入れると、形が崩れにくくなるのか」
先輩の小さな呟きが耳に入る。
このとき私は、彼の見えない努力の一端を垣間見たような気がして、胸が締めつけられた。
あの不器用なキャラ弁は、決して失敗作ではなかった。
完璧なキャラ弁を目指した、彼の懸命な努力の証だったのだと。
その日の夜。自室のベッドに入った私は昼間の先輩の姿を思い出し、胸が熱くなっていた。
あの不器用なキャラ弁は、先輩が試行錯誤して作ったものだったんだ……。
もしかして先輩は、いつも図書室で本を読んだりして、たくさん勉強をしていたのかな。
この日初めて目にした、完璧じゃない柊木先輩。
その人間らしい姿に、私はますます惹かれていくのを感じた。



