柊木先輩は眉間に皺を寄せ、自分のお弁当をじっと見つめている。
どうやら、焦げついた卵焼きを食べるのに少し苦労しているようだ。
その瞳は、いつものクールな光を失い、ほんの少しだけ戸惑いと悔しさが滲んでいるように見えた。
それは、私が知るかっこいい先輩とはまるで別人だった。
でも、先輩はどうしてルナの髪をこの前みたいな桜でんぶではなく、わざわざ卵焼きで……あっ。
その瞬間、私は数日前の佳奈との会話を思い出した。
──『ねえ、佳奈。このルナのピンク色のツインテール、桜でんぶ以外のもので再現してみたいんだけど。卵焼きとかどうだろう?』
『うーん。さすがにあのツインテールを、卵焼きで再現するのは難しいんじゃない?』
『だよね……』
私が何気なく口にした、何の気なしの言葉。
もしかして、その話を先輩が聞いて、キャラクターを卵焼きで再現しようとしてくれたのだろうか。
「いや、でも……まさかね」
先輩は生徒会長で、学校のみんなの憧れの的。そんな彼が、学年も違う私のことを気にかけるなんてありえない。
だから、きっと気のせいだよね。



