こんなとき、もっと近くで先輩のお弁当が見れたらいいのに……。

そんな思いが頭をよぎり、私はカバンの中に手を忍ばせる。

取り出したのは、野鳥観察が趣味でいつも持ち歩いている双眼鏡。

まさかこんな場面で使うことになるとは思わなかったけれど、好奇心を抑えきれなかった。

私は双眼鏡を目に当て、お弁当の中身をもっとよく見てみる。

今日のお弁当のキャラクターは、主人公のルナ。

だけど、以前見た完璧なルナとは違い、ピンクのツインテールを再現した卵焼きが、焦げて黒く歪んでしまっていた。

ルナの大きな瞳を再現した海苔の切り方も雑で、ルナの周りを飾るはずのミニトマトやブロッコリーも、まるで投げ入れたかのように乱雑に配置されている。

珍しいな、どうしたんだろう?

隙がないはずの先輩のまさかの失敗作に、私は息をのむ。