見えたのは、私が先ほど教室で食べていたパンに描かれていた、大好きなアニメの主人公、ルナだった。
私の視力は2.0だから、間違いない。
ツインテールのピンクの髪は桜でんぶ、大きな瞳は海苔とチーズ。魔法のステッキまでブロッコリーの茎で精巧に再現されていて、そのクオリティの高さに私は息をのんだ。
す、すごい……!
空き教室の窓から射し込む光が、柊木先輩の端正な横顔を照らす。
彼は、一人静かにそのお弁当を食べ始めた。その姿は、完璧な生徒会長ではなく、どこにでもいる一人の男の子のようだった。
「え……嘘でしょ? まさか、あの柊木先輩がキャラ弁!? しかも、私が好きな『ルナ』……?」
彼のクールな外見と、可愛らしいキャラ弁のギャップに、私の心は高鳴りを抑えきれなかった。
もしかして先輩も、ルナが好きなのかな?
ただ憧れていただけの先輩に、この日、私は初めて「親近感」という特別な感情を抱いたのだった。



