サラサラの黒髪で、目にかかるくらいの少し長めの前髪は、寸分の狂いもなく整えられている。

すらりとした長身に、その端正な顔立ちと相まって、彼はまさに絵に描いたような「極上男子」だ。

先輩の姿を視界に捉えた途端、心臓がドクンと大きく跳ねるのが分かった。

「怜央先輩、今日もかっこいい!」

「ほんと、絵になるよね~」

聞こえてくる女の子たちのうっとりしたようなひそひそ話に、私は心の中で何度も頷いてしまう。

廊下の賑やかだった空気が、彼が通り過ぎる一瞬だけ、張りつめたように静まり返る。

まるで、時間まで止まってしまったかのようだった。

先輩は学校中の誰もが憧れる存在だけど、同時に誰も近寄れない孤高のオーラを放っていた。

「ああ……先輩、ほんとかっこいいな」

無意識に口からこぼれる言葉。

柊木先輩を遠くから見つめることは、私にとっての日課だった。

生徒会室での非の打ち所がない仕事ぶり、廊下ですれ違うときの、私たちとは違う世界に生きているような雰囲気。

ああ、もうたまらない……!

先輩の姿を、一心不乱に凝視していたそのとき。

「あっ」

パチッと、先輩と視線が交わった。