けれど、それ以上に、先輩が私を大切に想っていてくれたという事実が、私の心を温かく満たしていく。

「先輩ったら、私が見ていることに気づいていたなら、声をかけてくれて良かったのに」

「ああ。本当は見られるのが恥ずかしくて、すぐにでも声をかけようかと思った。でも、君が俺の不器用な姿にがっかりして、もう来てくれなくなるんじゃないかって思ったら……怖くて言えなかったんだ」

「先輩……」

私が先輩にがっかりすることなんて、ないのに……。

柊木先輩は、私の手を握りしめている手に力をこめる。

「俺は、キャラ弁作りで失敗を繰り返した。でも、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。優衣のために作っているという事実が、俺の心を温かく満たしてくれたから」

彼の言葉は、凍りついていた過去の自分を溶かす、温かい魔法だった。

「俺、今日初めて、人に弱さを見せることができた。完璧じゃない俺も、優衣とだったら、もっと好きになれそうな気がする」

「先輩……!」

「俺も、優衣のことが好きだ。だから、これからも……俺のこの不器用な手を、ずっと繋いでてくれるか?」