「でも、この前見た先輩のキャラ弁が失敗作で……。確証はないけど、たぶん私の何気ない一言がきっかけなのかなって」

私がそう言うと、佳奈は真剣な面持ちで言った。

「それって、先輩が優衣の言葉をちゃんと聞いてくれてるってことじゃない?」

佳奈の言葉に、私はハッとした。

完璧な彼が、たった一つのキャラ弁のためにこんなにも苦労している。

彼が誰にも見せない弱さを、たまたま私が見たことには、もしかしたら何か意味があるのかもしれない。

佳奈の言葉は、曖昧だった私の気持ちに、はっきりと名前をつけてくれた。

「……そうか。私、先輩のことが好きなんだ」

憧れだった先輩が、身近な存在に感じられるようになった。

私の胸の奥で、小さな恋心が確かに芽生え始めていた。