次の日、私は昼休みに友達の佳奈と屋上でお弁当を食べていた。
風が心地よく、広がる青空を眺めていると、胸の中が少し軽くなる。
だけど、手元のお弁当に箸をつける気にはなれなかった。
昨日の先輩の失敗作のキャラ弁を思い出すたびに、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
「優衣、どうしたの? 今日はいつものルナのパンじゃないし、お弁当もあまり進んでないみたいだけど」
心配してくれる佳奈に、私はどう話したら良いか分からず、お母さん手作りの卵焼きを箸でいじる。
昔から大好きだったはずの卵焼きも、今日は全く味がしなかった。
「あのね、佳奈。ちょっと相談なんだけど……」
意を決して、私は柊木先輩のキャラ弁の話を切り出した。
最初は半信半疑だった佳奈も、私が真剣に話す様子を見てすぐに顔つきが変わった。
「えっ、あの柊木先輩がキャラ弁!? しかも、優衣の好きなアニメの?」
佳奈は身を乗り出して、目を輝かせた。
「すごい! これ全部、柊木先輩のお弁当!?」
私はノートにこっそりスケッチしていた、先輩のキャラ弁の絵を佳奈に見せる。
「さすが美術部だね、優衣。こんなに細かく描いてたんだ!」
「へへ。ありがとう」
佳奈に絵のことを褒められると嬉しくて、少しだけ胸の苦しさが和らいだ。
「それで、そのキャラ弁の話に戻るけどさ」
佳奈は楽しそうに、顔をこちらに近づける。
「ねえ、考えてみてよ。あの完璧主義者の柊木先輩が、だよ? 普通、こんなキャラ弁を毎日作る人が急に失敗するなんて、何か理由がないと変じゃない?」
佳奈の言葉に、心臓がどきりと跳ねた。
「しかも、優衣が話してたことと関係があるなんて、偶然にしては出来すぎじゃない?」
「そうかな……」
佳奈に言われて、私の中の「まさか」という気持ちが、少しずつ揺らぎ始める。



