気まぐれヒーロー




信じてたから。


物凄く怖くて、叫んで突き飛ばして、逃げ出しそうになったけど


私は、ジローさんを信じてた。



この人は、女の子を襲ったりしない。

しないし……“できない”んだろうと、思った。


ジローさんは私を試していたんだろうけれど

試していたのは、私の方だった。



力無く頭をもたげた彼の銀色の髪がはらりと流れて、顔に影を落とした。


そしてゆっくり私に覆い被さったジローさんは、私の頭のすぐ横にそっと、顔を(うず)めた。


さらに密着する、体。


重なり合う体温が、熱い。


人の温もりって、こんなにも……熱いの?



ほっぺたにジローさんの髪が触れて、少しだけくすぐったい。





「なんでお前……響さんの妹なんだよ」





僅かにくぐもった声が、耳元で溢れ落ちる。





「なんで俺……こんな体になっちまったんだよ……!!」





一筋、涙が頬を伝った。


どうして、私が泣いてるんだろう。


ジローさんじゃなく、私が。



これが、ジローさんの“悲鳴”なんだ。


彼の“傷”のすべてが、ここに詰まっている。




枕に顔を埋める彼の表情は、見えない。


私の視線の先には、天井しかない。




それでも“見える”。



バラバラに壊れそうな、表情。


がんじがらめになった、傷だらけの身体。




“女嫌い”じゃない。


女の人が、嫌いなわけなんじゃない。



彼は恐れてる。


傷を抉られるのが怖くて、もっと傷つくのが怖くて……


だから、近寄らないように、近寄らせないように


遠ざけるんでしょう?ジローさん……。



それでも必死で、克服しようとしてる。



前に進めない自分から、過去に囚われてる自分から抜け出したくて、もがいてる。



私を襲うフリしたのも、そのためなんでしょう……?




私にはそんな風に、彼が見えた。