ジローさんが蹴られたり殴られたりしてる横で、飛野さんとタイガは涼しい顔ですき焼きをつついていた。
これ、日常茶飯事だったりするんだろうか。
私なんかビクビクしてしょうがないっていうのに。
「俺に逆らうなんざ一万年早えんだよバカヤロウが」と、太郎さんは床に這いつくばったジローさんを足げにし、さも自分が格上なんだと知らしめるような目つきで弟を見下ろしていた。
ジローさんは黙って、むすっとしていた。
綺麗なお顔なのに、口の端からちょっと血が滲んでいた。
どうしよう……逃げたい。
キングオブキングの前じゃ、私なんて余りにも無力。その眼光だけで、あの世行き。
逃走しようかと、微かに腰を浮かした時だった。
「ひっ……!」
ゆるりと振り向いた太郎さんと、視線がごっつんこした。
「ごめんなぁももちゃん。見苦しいとこ見せちまって」
仏のようなスマイルを向けてくれた、太郎さん。
なぜかその笑顔に背筋が凍った。
お兄ちゃん……本当にこの人と知り合いだったの!?お兄ちゃん何してたの!?どんな人だったの!?
そしてなぜこのお方が、私のことを知っているの!!!
「なぁ、タローちゃんなんでコイツ知ってんの?」
まるで私の心を覗いたかのように、タイガがタイムリーな質問をお兄様にしてくれた。
「なんでって、お前……この子は響さんの妹じゃねーか」
何をいまさらそんなことを聞くんだという含みを持たせて、太郎さんがタイガに返した。


