げ、幻覚……?
だってハイジがいるわけない。ここ、ジローさんのおうちだし。
余りにもグリーンを意識しすぎて、緑なアイツが幻で見えてるだけだ。
きっとそうだ。そうに違いない。そうだよね。そうだと言って。そう、なんでしょ……?
「前々からアブナイとは思ってたんだよなぁ……。けど、ここまでとはな。重症じゃねえか。手の施しようがねえ」
タイガよりももっと哀れみの眼差しを送られ、本気で諦めたようなハイジの口調に、急激な恥の大波が私を襲った。
これは本物の、ハイジだ。
見られてた。
ラッパー『MOMO』になりきってたとこを、コイツに見られてた……!!
「ち、違う!!私、自分を勇気づけようとしてただけで……」
「どんな励まし方だ」
「うわああ~んお願い!!神様仏様ハイジ様!!今のは誰にも言わないで!!」
「安心しろ。言ったところでお前なら誰もが納得してくれる」
泣きついてみても、ハイジは冷静だった。冷静に私を切り捨てた。
私はもう涙目になるしかなかった。
っていうか……そんなことよりも
「なんであんたここにいるの」
「なんでお前ここにいんだよ」
重なった声。
私達は同じ疑問を、持っていた。
怪訝そうに眉をしかめるハイジ。
「私は……ジローさんのお兄さんに、会いにきたんだよ」
「……太郎さんに?なんで」
「な、なんだっていいじゃん。あんたこそ、何なのよ」
いや、いてもそこまでおかしくないけどね。
ハイジは白鷹ファミリーの一員なんだから、ジローさんの家にいたって変じゃない。
タイガや飛野さんが自分の家みたいに過ごしているように、ハイジにもその権利があるんだろう。
でも、今ここにいるなんて思わなかったから。
ラッパーを目撃されるなんて、思いもしなかったから。
それに
ハイジの今の格好が、余計にプチパニックに拍車をかける。
上半身には何も着てなくて、下はゆる~いスウェット。
下着見えそう。っていうか、ちょっと見えてる。
ボクサーパンツ派なんだとか、どうでもいい情報を手に入れ嫌悪した。
首にはタオル。濡れた緑の髪の毛。
こっちに押し寄せてくる、熱気。
完璧お風呂上がりな、ヤツの格好に。


