「もも、帰ったらゆっくり話しましょう」というお母さんのセリフも、右から左へと筒抜けていく。
どんよりと暗い気分で顔を洗い歯を磨き、髪をブラッシングして自分の部屋へ向かった。
外から「ももちゃ~んまだぁ?俺待ちくたびれて死んじゃう~蒸発しちゃう~干からびちゃう~」と耳障りな声が聞こえてきたので窓を開けてみると、ハイジが家の前でヤンキー座りして二階の私の部屋を見上げていた。
「あんた少しは黙ってられないの?近所迷惑でしょーが!!」
「お前よ~、まぁだ着替えてねえの?いつまで待たせんの?お着替え手伝ってやろうか?」
「いらんわ!!」
「なにカリカリしてんだよ。あ、さてはお前アレか!アレの日なんだろ、セーリだろ!!」
「!!」
くっ……お、大声で何てことを……!!
ご近所さんに丸聞こえだろうが!!
沸き上がってくる殺意と怒りに、握った拳が震える。
しかしヤツを殺して人生台無しにするなんてもったいないと思い直し、私は窓を閉めた。
とっとと着替えて出て行けば済む話だ。
なんて散々な朝なんだろう……アイツ何のために私の家に来たんだろう……。
ハイジと学校に行くのに、何か意味があるの?
そうじゃなきゃ、授業サボりまくってるアイツがこんな早朝から行くはずがない。
何を企んでるの……?
「お、やっと出てきたか」
「……」
早着替え名人もビックリの速さで制服に着替えると、私は玄関のドアを開けてハイジのところに嫌々ながらも歩いていく。
私を見ると、ハイジはヤンキー座りをやめて「よっこらしょ」と立ち上がった。


