気まぐれヒーロー




その日、疲れていた私はいつもより早く布団に潜り込んで、すぐに眠りに落ちていった。



『タマ』



……あれ、ジローさん?

暗闇の中にぼんやりと浮かび上がるジローさん。
なぜだか彼は、白い光に包まれていた。

どこなんだろう、ここは。
どうして私、こんなところにいるんだろう。



『もうお前は用無しだ』



へ?洋ナシ?

次は私、果物になっちゃうの!?



『お前のトモダチの方が可愛いから、俺はこっちをペットにする』



そう言うジローさんの横には、小春がいた。

ジローさんは小春の肩を抱いて、ニヤリと笑う。


二人は私に背を向けて、暗闇の奥へと歩き出し、遠ざかっていった。


残された私はどんどん深い闇へと飲み込まれていく。



『ま、待ってジローさん!!!置いていかないで……!!』



叫んだ声も虚しく闇にかき消され、二人は見えなくなってしまった。


私はもがきながらも、奈落の底へと落ちていくしかなかった。





「うわああああ!!!!」



自分の出した大声で目が覚め、私は急いで飛び起きた。

心臓が尋常じゃなく早鐘を打っていて、呼吸も乱れていた。


変な汗が、ぐっしょりと体を濡らしている。



「い、今の……夢……?」



落ち着きを取り戻し、辺りを見回す。

窓に目を向ければ、カーテン越しに差し込んでくる柔らかな日の光。

もう、いつの間にやら朝だった。


少しして鼓動がおさまってくると、布団から抜け自分の部屋からリビングへと下りていく。


な、なんだろあの夢……なんであんな夢見たんだろう……。

変なの……。



「おはよ……」

「あら、今日はあんた早いじゃない。……って、なんて顔してんの。いつにも増してヒドイわよ」



キッチンで朝食の準備をしていたお母さんは私の顔を見るなり、眉をひそめた。



「自分の娘になんて失礼なこと言うのよ」



朝から嫌な夢を見たせいで、確かに私の顔には疲労がありありと浮かんでいたと思う。

ため息をつきながらテーブルにつくと、向かいに座っていたお父さんはすでに朝食を食べ終わっていた。