最短距離

 男子という生き物は、年頃の女子からしたら、随分と子どもらしい。僕は男子ながら、その事実に気づいていた。そして、気になる女子に対しては、いかに“子供っぽさ”を出さないかが、勝敗を決める。何の勝敗かと聞かれればそう、恋愛の勝敗だ。

「はい、板倉」

 僕のところに、"それ"が回ってきたのは、二日後の金曜日。5限目と6限目の間の十分休みのことだった。

「なんだ、これ」

 それは、A5サイズほどの一枚の紙だった。A4の紙を半分にちぎったんだろう。一瞬、先日岡田さんが拾ってくれた小テストが頭をかすめた。

「見たら分かるだろ」

 持ってきたのは、僕の後ろの席のクラスメイト、宮沢健一(みやざわけんいち)という男だ。

 言われた通り、彼から渡された紙をひっくり返してみる。

「出席簿?」

 五十音順に並んだクラスメイトの名前を見て尋ねた。が、言ったあとに気づく。そこには女子の名前しか並んでいなかったのだ。下手くそな文字の手書きで書かれたうちのクラスの女子の名前を見て、不吉な予感が走る。

「違うって。ランキング」

「ランキング……?」

 まったく説明足らずな宮沢の言葉に、僕はちょっといらいらしてきた。人に何かを頼みたいなら、もっと分かりやすく簡潔に言って欲しい。