「板倉奏太」
ぎこちない口ぶりで僕のフルネームを呼んだのは、同じクラスの岡田京子という女の子。ショートカットで長い前髪が両目を半分ぐらい隠している。クラスの中では大人しく、どこかミステリアスな雰囲気を纏っているクラスメイトだった。
「なにかな」
「これ、落ちてたけど」
彼女はぶっきらぼうな口調で、僕に一枚の紙を差し出した。それは、4限目の英語の授業内で行った小テストだった。
「ああ、ありがとう」
どうやら僕の後ろの席のあたりに落ちていたらしかった。先ほど鞄にしまおうとした時に落としてしまったんだろう。自分でも気づかなかった。小テストのプリントを落とすなんて恥ずかしい。
「それだけだから」
そう言って彼女は自分の席に戻っていく。確か、彼女の席は窓際の一番後ろの席のはずだ。記憶の通り、彼女は授業中の居眠りにはうってつけのその席に座った。とはいえ、真面目な彼女が授業中に居眠りなんてするはずがないのだけれど。
わざわざ、あんな遠くの席からプリントが落ちていることを伝えてくれたんだろうか。
もし、岡田さんがテスト用紙を拾ってくれなかったらと思うと、ちょっと身震いした。彼女には見られてしまっただろうけれど、大勢の人に見られるよりはだいぶマシだった。
岡田さんが席についたところで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。僕はいそいそと5限目の国語の教科書を準備する。この時間帯の国語は、全生徒に対して「眠ってください」と言っているようなものだ。
ちらりと、右斜め後ろに座っている彼女を見た。岡田さんとは反対側の一番後ろの席にいる、安藤さん。彼女は僕と同じように、机の上に国語の教科書とノートを出し、左斜め前の方を眺めていた。誰か、特定の人を見ているのか、単にぼうっとしているのか分からないが、彼女の視線が浩人に続いていると感じるのは、醜い男の嫉妬心のせいだろうか。
ぎこちない口ぶりで僕のフルネームを呼んだのは、同じクラスの岡田京子という女の子。ショートカットで長い前髪が両目を半分ぐらい隠している。クラスの中では大人しく、どこかミステリアスな雰囲気を纏っているクラスメイトだった。
「なにかな」
「これ、落ちてたけど」
彼女はぶっきらぼうな口調で、僕に一枚の紙を差し出した。それは、4限目の英語の授業内で行った小テストだった。
「ああ、ありがとう」
どうやら僕の後ろの席のあたりに落ちていたらしかった。先ほど鞄にしまおうとした時に落としてしまったんだろう。自分でも気づかなかった。小テストのプリントを落とすなんて恥ずかしい。
「それだけだから」
そう言って彼女は自分の席に戻っていく。確か、彼女の席は窓際の一番後ろの席のはずだ。記憶の通り、彼女は授業中の居眠りにはうってつけのその席に座った。とはいえ、真面目な彼女が授業中に居眠りなんてするはずがないのだけれど。
わざわざ、あんな遠くの席からプリントが落ちていることを伝えてくれたんだろうか。
もし、岡田さんがテスト用紙を拾ってくれなかったらと思うと、ちょっと身震いした。彼女には見られてしまっただろうけれど、大勢の人に見られるよりはだいぶマシだった。
岡田さんが席についたところで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。僕はいそいそと5限目の国語の教科書を準備する。この時間帯の国語は、全生徒に対して「眠ってください」と言っているようなものだ。
ちらりと、右斜め後ろに座っている彼女を見た。岡田さんとは反対側の一番後ろの席にいる、安藤さん。彼女は僕と同じように、机の上に国語の教科書とノートを出し、左斜め前の方を眺めていた。誰か、特定の人を見ているのか、単にぼうっとしているのか分からないが、彼女の視線が浩人に続いていると感じるのは、醜い男の嫉妬心のせいだろうか。



