最短距離

「……え」

 先ほどとは種類の違う衝撃が背中を駆け抜ける。
 痛み以上に、「なぜ?」という疑問が渦巻く。その答え考える前に岡田京子は倒れていた僕の胸ぐらを掴んだ。

「あんた、大馬鹿だね!」

 すごい迫力。
 大人しい彼女が急変し、怒りのこもった瞳を僕にぶつけている。僕の思考は相変わらず追いついていない。

「な、なにすんだよっ」

「ひどい? 最悪? あんたが一番最悪で最低よ!」

 こいつは何を言ってるんだ? いきなり掴みにかかったと思えば、訳のわからないことをのたまう。

「なんだよ。急になんのこと?」

「すっとぼけないで。あんたが言ったんじゃん。あのランキング、あんなこと書くやつは最低だって」

 ああ、ようやく分かった。
 彼女が怒っているのは、先ほど僕が安藤さんから逃げてきたことなんかじゃない。例のランキングを見たときの僕の反応のことらしかった。

「それの、なにが悪い? 僕は当たり前のことを言ったまでだ。お前だって、悔しくなかったのか? 最下位で公表されて、あんなことやったやつが憎いだろ!」

「違う! あんたも同じでしょう!」

 気がつけば、目の前の岡田京子はボロボロと涙を流していた。僕は、咄嗟の出来事に「え!?」と声を上げるだけで、彼女を慰めるべきなのか、突然殴ってきたことを怒るべきなのか判断がつかない。
 お願いだから、誰もここを通らないで欲しい。誰かに見られれば、僕が女の子を泣かせていると思われる。