最短距離

「待って!」

 後ろから、岡田さんが必死に追いかけてくる。ごめん。でも今はきみとも話したくないんだっ。
 大体、今日のこの行動自体、おかしなところばかりだ。
 安藤さんからすれば単なるクラスメイトの僕が訪ねてきて、迷惑だっただろう。しかも、なぜか岡田さんが一緒にいるし。僕らが仲良しなら分かる。でも、その場の流れで安藤家へ一緒に行くことになっただけの仲だ。
 
 全部なかったことにしたい。僕は今日、彼女の家へは行かない。いつも通り部活に参加して暗くなる頃に家路に着く。それで十分。平凡な僕の人生は、平凡な毎日がよく似合う。
 そうすれば僕は彼女にあんなかたちで想いを伝えることもなかった。
 彼女の親友への気持ちを、あれほど真っ直ぐな気持ちを、この胸で受け止めなくて済んだ。

「……おわっ!?」

 ずでん、と嫌な衝撃が右半身を駆け抜ける。
 道端の出っ張りにつまずいて、転んだ。不意打ちすぎて、受け身をとる間もなく、なすがままに身体を地面に打ち付けた。

「……った」

 幸い、人通りの少ない道で誰にも見られずに済んだ。
 ……ただ一人、岡田京子を除いては。

「板倉! 大丈夫!?」

 彼女は僕に駆け寄ってきた。最初は心配そうな表情をしていたのに、僕の身に大した怪我がないと分かると平手で僕の頬を殴った。