最短距離

「安藤さんがショックだったのは、一番じゃなかったから?」

 僕は、彼女がどうしたら出てきてくれるのかを必死に考えていた。
 それの方法はつまり、彼女が悩んでいる原因を取り除くことに等しい。
 となれば、あの日女子の中では上位にランクインしていたにもかかわらず彼女がショックを受けてしまったのは、彼女の中では自分がクラスの女子の中で一番かわいいのだという自負があったからではないか。
 それを指摘するのは、些か勇気のいることだった。
 誰だって、自分のことを認めて欲しいし、自分が何かで一番優れていると思いたい。勉強や部活、趣味、特技。彼女にとって、それは容姿だった。
 彼女はあのランキングの存在自体に憤慨したのではなく、その結果が受け入れがたいものだったから、傷ついたのだ。

「……そうだね。馬鹿だよね、そんなことに傷つくなんて。私、自惚れてたんだ。自分が絶対、男の子に好かれてるって思ってた。ううん、私は矢部君に好かれたかった」

 決定的な一言が放たれる。
 僕は、口の中がさーっと乾いていくのを感じた。
 ああ、そうだ。
 僕はその一言が聞きたかったんだ。
 僕の心をへし折って、叶わない恋をしていると糾弾されたかった。
 そうしたら僕はきっと、きみのことを無理にでも諦めようとするだろうから。
 隣にいる岡田さんは、依然として静かに僕らの言葉を聞いている。こんなところ、他の誰かに見られるなんて、僕の生涯の黒歴史決定だ。