「お母さん、あとは僕たちにお構いなく」
「そう。それじゃあ、私は下にいるわ。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
お母さんが下の階に降りていくのを確認してから、僕はようやく決心がついた。
彼女の部屋の扉を2回ノックし、「板倉です。突然ごめん」と声をかける。
「……どうしてあなたが」
彼女の声色には、見舞いに来てくれて嬉しいというより、僕が訪ねて来たことへの戸惑いと落胆が滲み出ていた。
ショックなど、受けないつもりだった。
ここに来る前から、彼女の心に自分がいないことを知っていたから。彼女の中にいつもいるのは間違いなく、あいつだということも。
「心配だったから、見に来たんだ。岡田さんも一緒に」
「あまり話したことないけど、私、岡田京子。板倉の見張りね」
「なんだ、見張りって」
「だって、一人だったら安藤さんに何するか分かんないじゃん」
「何もしないって!」
僕らのやりとりを聞いてか、部屋の中から安藤さんの笑い声が聞こえてきた。
「……と、今のは冗談なんだけど、安藤さん最近どうしてるかなって」
緊張しているのは変わらなかった。けれど、適度に僕の気持ちを解してくれる岡田さんのおかげか、いつもよりも素直に言葉が出てきた。
安藤さんとちゃんとした会話をするのは初めてかもしれない。学校では、必要最低限のコミュニケーションしか取らないから。一言でも言葉を交わせた日には、1週間分の気分が明るくなるくらい、僕は彼女に心を奪われている。
「そう。それじゃあ、私は下にいるわ。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
お母さんが下の階に降りていくのを確認してから、僕はようやく決心がついた。
彼女の部屋の扉を2回ノックし、「板倉です。突然ごめん」と声をかける。
「……どうしてあなたが」
彼女の声色には、見舞いに来てくれて嬉しいというより、僕が訪ねて来たことへの戸惑いと落胆が滲み出ていた。
ショックなど、受けないつもりだった。
ここに来る前から、彼女の心に自分がいないことを知っていたから。彼女の中にいつもいるのは間違いなく、あいつだということも。
「心配だったから、見に来たんだ。岡田さんも一緒に」
「あまり話したことないけど、私、岡田京子。板倉の見張りね」
「なんだ、見張りって」
「だって、一人だったら安藤さんに何するか分かんないじゃん」
「何もしないって!」
僕らのやりとりを聞いてか、部屋の中から安藤さんの笑い声が聞こえてきた。
「……と、今のは冗談なんだけど、安藤さん最近どうしてるかなって」
緊張しているのは変わらなかった。けれど、適度に僕の気持ちを解してくれる岡田さんのおかげか、いつもよりも素直に言葉が出てきた。
安藤さんとちゃんとした会話をするのは初めてかもしれない。学校では、必要最低限のコミュニケーションしか取らないから。一言でも言葉を交わせた日には、1週間分の気分が明るくなるくらい、僕は彼女に心を奪われている。



