「なんだ、近いじゃん」
岡田さんがふう、と息を吐く。そうだろうか。僕には結構遠く感じたけれど。
目の前に安藤さんの家がある。彼女がこの中にいる、と思うと、僕の心臓は弾けそうなくらい速く鳴り出した。自分の心臓の音をこれほどはっきり聞くのは、陸上部の大会の日ぐらいだ。
僕は、ごくりと生唾を飲み込み、彼女の家のインターホンを鳴らすため手を伸ばした。が、震えてしまい、ボタンを押すのをためらう。
ああ、もう!
自分の不甲斐なさにイライラする。
「深呼吸、したら?」
ふと、隣にいる岡田さんが僕の肩にポンと手を置いた。
深呼吸。
そうだ、陸上の大会のとき、僕はいつも深く息を吐いているじゃないか。深呼吸しようとすると、息を吸おうと必死になる人がいるけれど実は逆で、まず吐かなければならない。息を吐きさえすれば、自然と吸いたくなる。
普段自分が意識していることなのに、忘れていた。
僕は思い切り息を吐き、今度は大きく吸った。すると緊張が解かれて、爆発しそうだった心臓がようやく静かになった。
「……ありがとう」
「ううん」
このとき、僕の目には岡田さんが女神のように優しく見えたのは気のせいだろうか。もしかしたら、僕が知らないだけで彼女は元来親切な人なのかも。
彼女の視線に見守られながら、僕はゆっくりとインターホンを鳴らした。ビーっという電子音がして、中から「はーい」という明るい声がした。
岡田さんがふう、と息を吐く。そうだろうか。僕には結構遠く感じたけれど。
目の前に安藤さんの家がある。彼女がこの中にいる、と思うと、僕の心臓は弾けそうなくらい速く鳴り出した。自分の心臓の音をこれほどはっきり聞くのは、陸上部の大会の日ぐらいだ。
僕は、ごくりと生唾を飲み込み、彼女の家のインターホンを鳴らすため手を伸ばした。が、震えてしまい、ボタンを押すのをためらう。
ああ、もう!
自分の不甲斐なさにイライラする。
「深呼吸、したら?」
ふと、隣にいる岡田さんが僕の肩にポンと手を置いた。
深呼吸。
そうだ、陸上の大会のとき、僕はいつも深く息を吐いているじゃないか。深呼吸しようとすると、息を吸おうと必死になる人がいるけれど実は逆で、まず吐かなければならない。息を吐きさえすれば、自然と吸いたくなる。
普段自分が意識していることなのに、忘れていた。
僕は思い切り息を吐き、今度は大きく吸った。すると緊張が解かれて、爆発しそうだった心臓がようやく静かになった。
「……ありがとう」
「ううん」
このとき、僕の目には岡田さんが女神のように優しく見えたのは気のせいだろうか。もしかしたら、僕が知らないだけで彼女は元来親切な人なのかも。
彼女の視線に見守られながら、僕はゆっくりとインターホンを鳴らした。ビーっという電子音がして、中から「はーい」という明るい声がした。



