最短距離

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「元気出せよ、奏太」

「かわいい女子ランキング事件」から、1週間が経過した。皆の中であの事件は確かに由々しき出来事に分類されているに違いないのだが、1週間も経てば何事もなかったように過ぎていく時間が、僕を焦らしていた。

 昼休み、浩人が僕を気遣ってか肩をポンと軽く叩く。休み時間、彼はいつも教室にいることが少ないのだが、今回の事件以降、毎日僕のところにやって来てくれる。まったく義理堅いやつだ。
 とはいえ、彼の気遣いに助けられているのも事実だ。あの事件に関して、女子は全員完全な被害者だし、男子も黒板に結果を書いたやつら以外は被害者だと思う。けれどもしかしたら、皆の目に、あの時声を上げた僕は加害者として映っているかもしれなかった。
 空席のままになっている安藤和咲の席を眺める。彼女が学校に来ない間、畑中さんたち女子グループが二日に一度ほどのペースで彼女の家を訪れていると聞いている。
 僕から畑中さんには聞きづらいため、浩人に事情を聞いてもらったところ、

「話してはくれるんだけど、部屋に篭って出てこないんだよー」

 と困った顔をしていたそうだ。

「まあ、何かきっかけが欲しいんだろうね」

 畑中さんも畑中さんで、安藤さんのことをかなり考えてくれているらしい。どうやら、安藤さん自身、あの忌々しい事件が起きた際にショックを受けたものの、そろそろ学校に行かなければならないという焦りもあるようだ。