女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 どうしよう、どうしよう……!
 私のせいで微妙な空気になっちゃった!

 冷や汗が止まらない。

 考えないと。考えないと。
 次に言うべき言葉は……!?
 頑張って頭を回すけれど、会話は苦手分野すぎて何も浮かばない。

 そんな中、沈黙をやぶったのは、ママだった。

「晴香、もうちょっと詳しく説明してちょうだい。女嫌いの克服と、Vチューバーデビューが全く結びつかないわ」
「えっとね、やっぱり王道はスキンシップをたくさんして慣れることだと思うの。だから、ふたりでカップルVチューバーとしてデビューして、イチャイチャ配信をする」

 そう言うと、ママはにがーい顔。

「いろいろ突っ込みどころはあるけれど……まず、配信じゃなきゃダメなの? ネットへのアップロードが危ないことはちゃんと知ってるわよね……?」
「直感? それと、人に見られてるほうが続けやすいかなぁって……。投稿(アップロード)についてはそりゃあ、絵師カツドウしてますし多少は。Vモデル作って売ったこともあるでしょ?」

 ママは納得いかなそうな顔で考え込んでいる。
 もうひと押し!

「悪い話じゃないと思うよ? ……Vチューバーやらせてくれるなら、引っ越しも再婚も、喜んで受け入れる」

 必殺、○○してくれるなら××する!!!
 ちなみにこれ、やると嫌われるのでよいこはマネしないで……。

 ママの眉間のシワが深くなった。ごめん。

 そして。

「Vチューバーの話はいったん保留。あとで、いくつか条件を出して、それを守れるならVチューバー活動を許可する。それでどう?」
「……条件って、どんな?」
「ひとつ絶対に必要なのは、叶方くんを乗り気にさせることね」

 ママの言葉を聞いた瞬間、私はギュルンと叶方さんのほうを向いた。
 ヒッと顔をこわばらせた叶方さん。
 かばうようにお父さんがしゃべりだした。

「私からもひとついいだろうか」
「はい、なんでしょう」
「Vチューバーを始めるにはかなり費用がかかるのは知っているな? お年玉十年分でも足りないだろう。どうやって工面するつもりだ?」

 なんとなく、この質問の答えに詰まったら、Vチューバー活動の許可が出ない気がした。
 えっと、ええと、今の預金額は……??

「お、お年玉はずっと貯めてますし、イラストとかで少しは稼いでいるので、妥協して安めのものを選んでいけば足りると思います。同居が決まり次第おこづかいノートをお見せしますね」

 ぶっちゃけかなりキツいけど……。
 冷や汗だらだらになっていると、ほんの少しだけお父さんの目じりが下がった。

「……ならいいだろう。叶方、お前さえよければ再婚、同居したいと思っているが、どうしたい?」

 それじゃあ……!

 じぃーっ。叶方さんのほうを見る。

 ママとお父さんは私みたいなあからさまな見つめ方はしなかったけど、
 みんなが叶方さんに注目しているのはたしかだった。

 叶方さんは頭をぽりぽりと掻いて。

「わ、わかったよ……」



 同居が決まって、少し世間話をしたあと、ふたりは帰っていった。