女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 それを聞いて、俺もこっそり行こうと思った。
 一応お母さんに言って、晴香たちが出発したタイミングで支度をして、少し遅れて公園に着く。

「父さん」
「……叶方!? どうしてここに」
「お母さんが教えてくれて、こっそり来た。こっそりね」
「本当にこっそりで頼む。晴香は、叶方がDMを知ったら傷つくかもしれないと思って、ここまで隠し通したらしいんだ」
「わかった」

 そんな風に言葉を交わしていると、晴香と話している女性の声が聞こえた。

「叶方さまはもっと孤高にしているのがお似合いよ。間違っても私やあなた、そのほか有象無象と関わるべきでない! 関われば、その才能でみんなを打ちのめして、あたしのようなモンスターを生み出す! なのにあんたは!! 叶方さまを連れまわし! 愛称で呼び! 愛称で呼ばれ! あまつさえそれをネットにアップした!? 許せるわけがないわ!!!!!」

 ――あいつ、だ。

 覚悟はしてから来たはずだったけれど、トラウマと同じ声に、血の巡りが悪くなるのを感じた。

「孤高にしてるのがお似合い? ふざけないで。あなたは叶方さんを何も見てない」

 晴、香……?

「……わかってるよ、叶方さんがすごいことは。毎日見てるから、痛いほどわかる。尊敬してるよ」

「でも、それは隣に居るのを諦める理由にはならない! たまに落ち込むことはあるけど、それでも、私は頑張りたいの! ――私は、叶方さんの隣で、笑ってたい!」

 尊敬してる。
 隣で、笑ってたい。

 晴香の言葉が、じわりじわりと心にしみ込んで、胸が熱くなる。

 そのとき――

「頑張りたい? そんな気持ちはすぐに折れるわ!
 いくらあんたが頑張ったところで、あんたと叶方さまは不釣り合いのまま変わらない! 叶方さまは誰とも関わらず、孤高であるべきよ! だからこそあたしは、なんとしてでも、あんたに『叶方さまから離れる』と言わせたかった!
 なのに、それなのに……ッ!」

 ――晴香に、つかみかかろうとしている?

 そうわかった瞬間、めずらしく思うより先に体が動いた。
 俺は晴香のほうへ飛び出して、晴香を抱きかかえ、間合いから逃れる。

「――少なくとも、こいつは不釣り合いなんかじゃない」

 名前を出していいのかわからなかったから、こいつ呼び。

 でも、本当は名前を呼びたかった。
 俺が隣に立ちたいと思った、今腕におさまっている少女の名を。