彼女の語りは止まらない。
「あたしには絵しかなくて、絵すら上手くなくて、しかもすばらしき叶方さまの絵を永遠に喪わせた! あたしは叶方さまの完全下位互換の分際で、叶方さまの絵を汚したし、叶方さまはそれを責めなかったの!」
もはや叫びに近かった。
「叶方さまはもっと孤高にしているのがお似合いよ。間違っても私やあなた、そのほか有象無象と関わるべきでない! 関われば、その才能でみんなを打ちのめして、あたしのようなモンスターを生み出す! なのにあんたは!! 叶方さまを連れまわし! 愛称で呼び! 愛称で呼ばれ! あまつさえそれをネットにアップした!? 許せるわけがないわ!!!!!」
――ああ、わかった。
このヒトが潰れて、私がまだかなくんの隣で笑えている理由。
「孤高にしてるのがお似合い? ふざけないで。あなたは叶方さんを何も見てない」
このヒトは、かなくんを崇拝している。
きっと、初めてかなくんの絵を見た日から。
絵を汚すより前から、ずっと。
絵では絶対にかなくんに敵わないと思って、追いかけることを諦めて。
つらさを軽くするために、〝かなくんはすごくすごいから諦めるのも仕方ない〟と自分に言い聞かせるために、かなくんから距離をとり、崇めているんだと思う。
「あんたこそ、叶方さまとの才能の差を弁えてない!」
彼女は目をくわっと見開いて、私に叫ぶ。
きっと彼女は、彼女自身と同じように、私がかなくんと距離を取ることを望んでいる。
――彼女自身が諦めたから、私にも諦めてほしい。
――諦めていない人がいると、「諦めるのも仕方ない」って思えなくなる。
――そしたら、もっとつらくなる。
そんな心情が、簡単に想像ついた。
でも、諦めてなんてやれない!
「……わかってるよ、叶方さんがすごいことは。毎日見てるから、痛いほどわかる。尊敬してるよ」
私にできることも、できないことも、かなくんはなんでもできる。
動画が伸びてるのもきっとかなくんのおかげ。
「でも、それは隣に居るのを諦める理由にはならない! たまに落ち込むことはあるけど、それでも、私は頑張りたいの! ――私は、叶方さんの隣で、笑ってたい!」
このヒトが潰れて、私がまだかなくんの隣で笑えている理由。
それは、自分になにもかも足りていないと知って、それでも頑張りたいと思ったかどうか――!
私は胸に手を当て、まっすぐに彼女を見すえた。
「あたしには絵しかなくて、絵すら上手くなくて、しかもすばらしき叶方さまの絵を永遠に喪わせた! あたしは叶方さまの完全下位互換の分際で、叶方さまの絵を汚したし、叶方さまはそれを責めなかったの!」
もはや叫びに近かった。
「叶方さまはもっと孤高にしているのがお似合いよ。間違っても私やあなた、そのほか有象無象と関わるべきでない! 関われば、その才能でみんなを打ちのめして、あたしのようなモンスターを生み出す! なのにあんたは!! 叶方さまを連れまわし! 愛称で呼び! 愛称で呼ばれ! あまつさえそれをネットにアップした!? 許せるわけがないわ!!!!!」
――ああ、わかった。
このヒトが潰れて、私がまだかなくんの隣で笑えている理由。
「孤高にしてるのがお似合い? ふざけないで。あなたは叶方さんを何も見てない」
このヒトは、かなくんを崇拝している。
きっと、初めてかなくんの絵を見た日から。
絵を汚すより前から、ずっと。
絵では絶対にかなくんに敵わないと思って、追いかけることを諦めて。
つらさを軽くするために、〝かなくんはすごくすごいから諦めるのも仕方ない〟と自分に言い聞かせるために、かなくんから距離をとり、崇めているんだと思う。
「あんたこそ、叶方さまとの才能の差を弁えてない!」
彼女は目をくわっと見開いて、私に叫ぶ。
きっと彼女は、彼女自身と同じように、私がかなくんと距離を取ることを望んでいる。
――彼女自身が諦めたから、私にも諦めてほしい。
――諦めていない人がいると、「諦めるのも仕方ない」って思えなくなる。
――そしたら、もっとつらくなる。
そんな心情が、簡単に想像ついた。
でも、諦めてなんてやれない!
「……わかってるよ、叶方さんがすごいことは。毎日見てるから、痛いほどわかる。尊敬してるよ」
私にできることも、できないことも、かなくんはなんでもできる。
動画が伸びてるのもきっとかなくんのおかげ。
「でも、それは隣に居るのを諦める理由にはならない! たまに落ち込むことはあるけど、それでも、私は頑張りたいの! ――私は、叶方さんの隣で、笑ってたい!」
このヒトが潰れて、私がまだかなくんの隣で笑えている理由。
それは、自分になにもかも足りていないと知って、それでも頑張りたいと思ったかどうか――!
私は胸に手を当て、まっすぐに彼女を見すえた。



