女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 かなくんはいつも私が使わないような油絵の具系統のブラシばかりを選び、難なく使いこなしていた。
 そして、みごとに描きあげたのは――

「私!? めちゃめちゃかわいい!」
「そ。俺から見たハルだよ」
「さっすがかなくん! そしてグッジョブこのキャラデザを作った私!!」
「……そこで自画自賛が入るあたりがハルクオリティだよな」
「私のことを何だと思ってるんですかぁ!?」
「すごくかわいい」
「っ~~!」

 撃沈したところで、這いずって録画と録音を止める。
 ほっぺたを冷やしつつ、私は笑みをつくった。

「こ、これで良い感じの録れたんじゃない?」
「ほんと? よかった」

 嬉しそうに笑うかなくんに、私もだよ、と心の中で言う。
 ――収録の途中からかなくんに笑顔がもどったみたいで、よかった。

 口に出したら恥ずかしくなりそうで、言えなかった。


***


 私は、ひとりきりの自室で、トークアプリでお父さんにメッセージを送っていた。

『少し相談があるんですけど、いつ空いてますか?
 それと絶対に、絶対に叶方さんには内緒でお願いします』

 少しして、返事が来る。

『今日の夜ごはんのあとでどうだい?』

 私は、推しのVチューバーが出しているスタンプのうち「OK!」を選んで送信した。




 言われたとおり、夜ご飯の後、お父さんの部屋へ。

「――それで、わざわざ叶方には秘密に、だなんて、何があったんだい?」
「攻撃的なDMが来まして。その文章中に、『叶方』って名前があったんです」

 DM画面を開いたスマホを差し出せば、お父さんは顔をこわばらせる。

「本当に、叶方の名前があるな。……念のため聞くが、動画の中で言ってしまったとかではないんだな?」
「もちろん。確認しましたが、無かったです。それと、――」

 スマホを返してもらい、DMの送り主のつぶやき一覧を開く。

「――これを見ていただければわかると思うんですが、このヒト、近所の風景と、制服の写真もアップしてるんです」
「ネットリテラシーのかけらもないな」
「ええ。言っちゃなんですがアンチ活動って捨て垢でやるもんだと思ってました」

 絵描きとしての私にもアンチはいたけど、みんな当然のようにアンチ活動のためだけに新しく捨て垢を用意していた。

「活動のアンチというよりは、叶方に因縁ある人物という感じがするね。それで、叶方の過去についていちばん知っていそうな私を頼りに来た、と……。その判断は正しいと思うよ」
「!」
「正直、ここまでしてくる人間の心当たりは、ある。私が言うべきではないのかもしれないが、彼女について説明するなら、どうしても叶方の過去に触れねばならない。ひとつ言えるのは――」

「――彼女が、叶方を、女嫌いになるほどに追い詰めた」

 静かな部屋に、私たちの話し声だけが響いていた。