お父さんからひとりで話しに来いと言われてしまった。
……。
がんばるしかない!
「がんばってくるね!」
「うん、応援してる」
食事後、かなくんに宣言すると、かなくんはふわりと笑った。
3次元で良かった、これが絵だったら卒倒した自信あるよ!
***
お父さんの部屋に、私は足を踏み入れていた。
「これがおこづかいノートです。それで、ええと……」
どうやって言い出すか悩んでいると、お父さんが静かに言った。
「機材、叶方に買わせたのか」
「あ……はい。本人から申し出があったんです。安いもので妥協しようとしていたところに、『妥協するな』と」
たしかお父さんは、自分でお金を用意しなさい、みたいな空気だった。
かなくんに払ってもらったと知ったら怒られちゃうかなぁぁぁ。
びくびくしていると、お父さんが口角を上げた。
「叶方が金出したくなるほどの内容なら、がんばれとしか言いようがないな」
「え? ……どういう意味ですか?」
「あれだけ株で稼いでおきながら、ほとんど何にも使ってこなかったんだ。そんなあの子が、ここで金を使うべきだと判断した――ならばそれを信じたい」
そう言うお父さんの顔は、いつになくおだやかだった。
ん、もしかしてひとりで来いって言われたのって、これをかなくんの前で言うのが照れ臭いからですか?
ツンデレ属性あるんですか??
「あ、ありがとうございます?」
やばい、語尾にハテナが生えてしまった。
……ってか今更だけど、私、かなくんに大金出して機材買ってもらってるんだよね。
いつか絶対、このお金も返さなきゃ。
Vチューバーで稼げれば一番だけど、必要とあらばアルバイトしてでも。



