和んだところで、再び冊子と向き合う。
このページは計算問題ばっかりみたいだ……。
手を動かしつつ、ふと気になったことを聞いてみる。
「かなくんは何の宿題なの?」
「ん、これのこと? これは、物理基礎のワーク」
「はえー物理! なんだっけ、力学? とか?」
知ってる言葉を言ってみたものの、力学って、どんなのだっけ……?
「うん。まあ、力学分野。加速度とかの計算」
「加速度! なんか、かっこいいね」
「そう? 図を書いて、どの式を使ってほしそうか読み取って、計算する。それだけだ」
なんでもないことみたいにかなくんは言う、けど。
かなくん以外の人にとって難しいことだったとしても、かなくんは涼しい顔をしていそうな気がするから、あんまり信用できないなぁ。
手元の冊子に目線を落とす。
ページが変わり、今度は文章題だった。
『Aさんは、家から3kmはなれた塾に自転車で通っている。自転車の速さが秒速2m、塾に居る時間が2時間であるとき、7時ちょうどに家をでたAさんが帰宅するのは何時?』
ええと、行きと帰り合わせて6キロ、6000メートル進むから、3000秒かかって、50分。で、ええと。
「手が止まってるけど大丈夫?」
「ちょ、じゃましないで!?」
「あごめん」
考え直しだ。
行きと帰り合わせて6キロ、6000メートル進むから、3000秒。
移動時間は50分で、塾に居るのが2時間。
つまり、9時50分!
「よしっ」
答えを書き込んでにっこりしていると。
「水を差すようで申し訳ないけど、悪いことは言わないから途中の図とかを残したほうがいいと思う」
「えー、めんどくさい」
「いやさ、ちょうど物理基礎で図を書けって指定があって……」
「どんなの?」
見せてもらうと、落ちる物体の問題だった。
落ちる物体、地面、正の向きに、こまかい数値まで書かされるらしい。
見ているだけで嫌になってくるくらい、すごくすごくめんどうくさそうだ。
「慣れといたほうが良いよ。ハッキリ言ってハルとじゃなきゃ全問イライラする」
かなくんのイケボとVモデルが合わさって、くらっとくる。
なんでもない言葉なのに、格好良すぎませんかー!?
「私とだったらイライラしないの!? へっへっへ、私はイライラ特効薬だったかー」
真っ赤っかにならないように、冷静さを保ちつつおどけてみせた。



