女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 届いた機材を俺が持ち、晴香は手ぶらで廊下を歩く。
 この状態で無言で居るのは案外気まずくて、自然と会話がはじまっていた。

「――……それでさ、Vモデルはまだもう少しかかりそうなんだけど、先に縦型動画の企画とか、歌ってみたの録音とかしたくて」
「どういうのがやりたいの?」
「かなくんのイケボが映えるやつ! で、私が後方腕組みオタクをやる」

 俺を買ってくれているのはじゅうぶんに伝わるけど、それでいいのか?

「晴香の魅力が映えて、俺が後方腕組みオタク?をやってる動画もつくって、ペアにしたら?」
「それいいじゃん! カップルチャンネルっぽい!」

 目を輝かせる晴香。
 ふと気になることができたので、聞いてみる。

「……晴香は見たことあるの? カップルチャンネル」
「いや? 3次元だったから見てない。夫婦VはあってもカップルVはほとんど見つからなくて」
「見たことないのにカップルチャンネル始めようとしてたのか」

 突っ込むと、にひっと笑う晴香。

「だって、どうせ私たちにできることをやるだけだもん」
「なんでセリフが無駄に格好いいんだよ」
「ええー。…………これでラストかな?」

 晴香の言う通り、運び込みは今手に持っているもので最後のようだった。

「そうみたいだな。次はもろもろの初期設定か?」
「あっ、忘れてた!」

 忘れてたのかよ……。
 苦笑いをしながら、最後の機材を部屋に下ろし、初期設定などのセッティングに勤しんだ。

***

 晴香の熱意こもるキラキラの目で見つめられる。
 それが、どうにもむず痒くて。
 俺が、晴香の興味の対象になれたみたいで。

 ――嬉しい。

 独り占めしたい。
 唯一になりたい。
 だなんて、おこがましいことを思ってしまう。

 そう。
 おこがましいのだ。
 もし、独り占めが叶うなら、それは晴香が俺以外の何にも興味を持たないことを意味するのだから。

 努力なんてしたことがなくて、セミプロとはいえ全てにおいてプロ未満のままだった、中途半端な俺。
 でも、自分を理想の一部だと言ってくれた晴香のためなら、俺は頑張れるかもしれない。

 晴香は、3次元で恋ができるようになりたくて、Vチューバーとしてイチャイチャ配信をしたいと言っていた。

 ならば、晴香の理想を叶えるため、俺は全力でイチャイチャしてみせよう。
 そうしたら、カナではなく叶方のことも意識してくれるだろうか?