女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 歌い終えると、拍手が響いた。

「上手いね。今まで会った人の中で一番かも」
「そりゃどうも」

 嬉しいけど、かなくんに私より数段ハイクオリティのものをお出しされる予感がしているので素直に喜べない。

「んじゃ、それを歌えばいいってことね」

 パネルを操作してから、かなくんはマイクを握る。
 固唾をのんで私はそれを見守った。

 かなくんが、歌いだす。

♪~

 ……っ、なに、これ!!
 思ってた以上のかみ合いだった。

 もとからのイケボはもちろん、かゆいところに手が届くみたいな気持ちいい歌い方のテクニックも兼ね備えていて、実力派歌手として売り出されても通用しそうって思っちゃうくらいだ。
 全教科5って、音楽も5取ってるわけだもんね。

 すごい努力の上で歌い方を身につけたのかな? って思うけど、5取るには苦労しなかったって言ってたよね……。楽しんでるうちに無意識に努力っぽいことをしてたのかな……?

 とにかく、すごい。
 もっと、私も、と思っちゃうくらいだ。

 曲が終わってすぐさま私はたずねる。

「ねえ。歌、どんな練習してるの?」
「いや、あんまり……」

 なにも練習してないよと言いたげな口ぶりだ。

「ええっ、ろくな練習もせずに……?」

 出会い頭に勝手にハイスペック呼ばわりした私が言うべきではないが、このヒト思ったよりスペック高いぞ……?

***

 それから2時間近く、ルームの電話が残り10分を告げるまで、私たちは歌い倒した。

 帰り支度をしつつ、ふと思いついて聞いてみる。

「……気になってたんだけど、かなくんはここのカラオケ来たことあったの?」
「ないし、カラオケ自体はじめてだけど?」
「え?」

 私、はじめて来た人に受付まかせちゃってたってこと……?
 さっきの歌のうまさといい、どんな適応力?

 ってか、そうだ!

「じゃあ、アプリはいつ入れたの?」
「行きに気にしてたときだけど」
「え、そのときにもう『帰りに来るかも』って予測してたの?」
「まあね。来なかったら消せばいいし」

 こ、高校生ってすごい……!
 それとも、かなくんだから?

 なんとなく、後者な気がした。

「今日は本当にありがとう! さ、帰ろ帰ろー!」

 このあと、すっかり忘れてたお支払いを代わられちゃって、慌てて半額を押し付けた。
 ふたりで半分ずつお金を消費したから、実質、折半ってことで。