女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 それから数日。
 ことの進みはあんまりよくなかった。

 だけど、なんと!
 今日はかなくんと一緒に機材を買いに行くんだ!
 これで機材購入は終わる!!!

 そんなわけで電車に揺られることそこそこ。

「ついたー!都会だー!」
「どんな感想だよ」
「あ、綺麗そうなカラオケ! 行こうよ行こうよ」
「秒で目的を忘れてるな」

 軽く鼻で笑われ、ハッとなる。

「あっそうだった! 申し開きのしようもございません……」

 そう言うとかなくんは、こらえきれないみたいに、口に手をあてて笑いだす。
 かなくんの笑いは、なんか、不快感が無くてすごい。

***

「いいお買い物できたねー!」
「……ああ」

 私たちは笑い合う。
 手には紙袋。

 機材を運ぶのは大変そうだから、お家に送ってもらうことにした。
 そりゃそうだけど、パソコン、カメラ、マイク、マイクとパソコンをつなぐのに使うオーディオインターフェース、これらをぜんぶ手持ちはどうあがいても無理だ。
 そういえば防音材は、なくてもほかの家まで響かないくらい家が広い(!)のでまあいいかとなった。

 紙袋にあるのは、さっき本屋で買った本だ。私は気になってた絵の資料、かなくんはなんか賢そうなハウツー本?みたいなのを買ったんだ。

 帰り道、駅へ向かう道の途中、行きにも見かけたカラオケ屋さんが目に留まる。

「ねーねー、カラオケ、寄ってもいい?」
「いいよ」

 笑顔で応じられて、なんだか本当のカップルみたいだ。
 私もつられて笑顔になるのを感じながら、店内に入る。

「いらっしゃいませー」

 あっ、そうか。
 いっつも誰かが受付してくれてたけど、自分でやらなきゃ……!

「何名様でしょうか?」
「2名です」

 店員さんの問いに私が答えようとする――より先に、かなくんが右手をチョキにした。

「利用時間はいかがされますか?」
「2時間でお願いします」

 腕時計をちらりと見てかなくんが言う。

「アプリの登録はお済みですか?」
「はい」
「バーコードの提示をお願いします」

 かなくんがさっとスマホを差し出すと、店員さんはそれを読み取った。

「機種の指定はございますか?」

 かなくんがちらりとこちらを向いて、私は首をぶんぶんと横に振った。

「いえ指定は無いです」
「かしこまりました。……お部屋の番号はこちらになります。ドリンクバーはあちらにあります。ごゆっくりどうぞ」
「はい。……行こう?」
「う、うん!」

 ひと言もしゃべることなく受付が終わった、……?
 頭がハテナでいっぱいになったまま、手を引かれてまずはドリンクバーへ。

「どれがいい?」
「麦茶だけど。……じ、自分でやるよ!?」

 まだ頭の99%をハテナが埋め尽くしていたけど、かなくんが麦茶を用意しようとしてるのに気づいて慌てて止めた。

 な、なんだか今日のかなくんは、すごくすごい……!
 ぶっちゃけ今日はずっとこんな調子だったんだよね。