女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 ごはんをほおばる最中、ふと思ったことを口に出す。

「ほうひふぇは……そういえば、ここの中学校ってどんなところなの? 叶方さんは知ってますか?」

 叶方さんは少し考えて、言った。

「フロアによってはトイレが臭い」
「食事中にする話じゃないな!?」

 突っ込むと、叶方さんは申し訳なさそうだ。

「ごめん。ただ言い訳させてもらうと、ずっとここに住んでるからほかの中学校との比較は難しい。それに高校入ってから、中学までの記憶がだいぶ薄れてるし」

 ああ、なるほど……でもでも!

「なんか、成績の取り方とか、やばい先生とか覚えてたりしない?」
「あんまり意識しなくても5取れたけど、ぶっちゃけ一目置かれてた感じはあるからみんなできることではないのかもしれないな。……もし苗字が四宮に変わるなら、変に期待されてしまう可能性すらある。気を付けて」

 やっぱ叶方さん頭いいんだな……。

「授業で分からないことが出たら聞いていい?」
「ん。まあ」
「さっすが! さっそくだし授業じゃないけどちょっと聞いてもいいですか?」
「……なに?」

 困惑した声だ。

「活動名を決めたいなと思って。愛称にしたいんだ」
「それは、ほんとは本名でやって3次元で恋愛してるテイにしたいけど、ネットリテラシー的にあれだから愛称にするってこと?」
「そーそー、やっぱりエスパー?」

 お前が言うなという目を向けられて、しくしく顔みたいに顔を覆った。
 気を取り直して。

「それで、私は本名もじるならハルがいいなって思うんだけど叶方さんはどんなのがいい?」
「……シノかカナかな」
「その心は?」
「ナタは(なた)すぎて嫌なのと、そっちが男性名に寄ってるならこっちは女性名に寄せるべきかなと」

 むむむ、なるほどね……。

「どっちがいいかは好きに決めて。あと叶方さん呼びちょっと嫌だから愛称でお願い」
「!!!」

 そうだったんですかぁー!?
 女嫌いだったらあんまり馴れ馴れしいのもよくないかな……なんて思ってさん付けにしてたよ!

 んー、それなら。

「かなくんって呼ぶのはどう?」
「……かなくん、か。悪くないな」

 そう言って浮かべたやわらかな笑みは、ウソではなさそうだった。
 ウソかどうか真っ先に疑うのってよくない気がするけど……またあの自己犠牲で、ほんとは嫌なのにいいねって言う可能性もあるなーと思って警戒してたんだよね。

 でも、これはきっと本心だと思う。
 初対面で女嫌いを見抜いた私だから間違いない。

 え? 愛称呼びにしてほしいことに気付けなかったのに?
 あはは、あっははははは……。

 セルフ突っ込みで冷や汗だらだらしているうちに、食べ終わって、その場はお開きになった。