女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 そんなわけで向かったのは、自室のとなり。
 晴香の部屋だ。

「……入っていいか?」
「どーぞどーぞ!」

 部屋に入ると、晴香はお願いをするように手を合わせていた。
 母子でそっくりのしぐさだ。

「ごめん、さっそくだけど配線で困ってて、ちょっと助けて……」
「もちろん、そのつもりで来たし。やっていい?」
「お、お願いします! あ、これ、前の部屋での写真あるから参考に……!」

 ほかのパソコンの配線ならやったことがあるし、見なくても大丈夫だろうけどいちおうチラ見しておく。うん、問題なさそうだ。
 作業を進めながら、どう切り出せばいいか考える。

「――Vチューバーの件だけど」

***


「両親を説得することができたら、Vチューバー、全面的に協力したいと思う」 

 言いながら、自分で自分に驚いた。



 聞きたかったこと。
 それは――どうしてそこまでVチューバーについて熱く語ったのか。
 それが分かれば、自分も心から楽しいことに出会えるような気がした。 

『私は誰よりも、私の直感を信じてる』

 きっとこの言葉が聞けただけで、協力に踏み切るには十分だった。
 だって、その直感を、俺も信じてみたいと思ったから。
 晴香が思い描いた完全体を、見てみたいと。

 お金を出すと言ったらかなり恐縮してしまったけれど、そんなところも含めて好感がもてた。あの調子なら、あの澄んだ瞳なら、変に浮かれたり使い込んだりすることはないだろう。

 ――どうせ、お金を使いたいものも他に無いんだから、晴香が望んだ景色に使うほうがずっといい。