女嫌いのスパダリと、2次元命な天才少女が、カップルVTuberをするようです。

 俺は、なんでもできた。
 本当に、なんでも。

 勉強、運動、芸術、IT系、家事、コミュニケーションだって。
 一度でもその道のプロを見ていれば、セミプロ程度の動きはできた。

 だから、何かに詰まることも、試行錯誤の楽しさを知ることもなくて。
 娯楽だって、達成感がまるでないから、楽しさが分からなくて。

 ――どうしたら、そんなに楽しそうに語れるのだろう?

 どうせ、試行錯誤する余地があるレベルのスペックなんだろう。
 そう思いつつ、晴香が自分と同等のスペックで、かつ人生を楽しんでいる可能性が捨てきれなかった。

 いずれにせよ、一緒に生活したら、なにか手掛かりが掴めるかもしれないと思った。



***


 晴香とそのお母さんが引っ越してくる日。
 あ、晴香のお母さんはこれから俺の母にもなるのか。
 ともかく。
 冷蔵庫に飲み物を取りに行くと、お母さんと出くわした。

「こんなところにいて大丈夫ですか?」
「ええ。荷物の運び入れはだいたい終わったわ」
「それはよかったです」

 適切な言葉を並べて微笑むと、お母さんがお願いをするように手を合わせた。

「もしよければ、晴香の様子を見ておいてくれない?」
「……どういう意味ですか?」
「きっとなにか困っているだろうから、助けてあげてほしいの」
「そのついでに親交を深めてこい、と……わかりましたよ」

 ま、ひとつ聞きたかったこともあるしちょうどいいか。