次の日の夜。

今日もまたいつもと同じような日。

でも、二日連続で彼に会えるのは、やっぱり嬉しかった。

もう行き慣れた道を、スタスタと歩いていく。

横断歩道までくると、なぜか彼がわざわざ向かい側まできていた。

理由はすぐに分かった。

スマホの充電が切れたから、少しズレた家の時計を頼りにしていたせいで遅れてしまったんだ。

私は申し訳ないという気持ちを込めながらも、彼に手を振った。

信号が青に変わり、小走りをしていくところだった。

「やっほ、もう遅いからきちゃ……」

彼はそう言いかけていた。

「え、ちょっ――」

キィィィガッシャーン!!

もう、言いかけた頃には遅かった。

私は反射的に耳を塞ぎ、目を必死に閉じていた。

小説のワンシーンでよくある、目の前で起こった事故。

少しずつ目を開けると、力なく横たわっている彼の姿が見えた。

現実って、思ってたよりも残酷だ。

なんなの、これ……。

足が勝手に、彼の方に近づいていく。

本当はずっとずっと怖くて、見たくもないくせに。

彼の目の前までくると、するすると膝の力が抜けていくのが分かった。

「……澄真、ねえ、まって、澄真」

あぁ、そっか。

彼の名前を呼ぶのも、これが初めてだ。

馬鹿みたい。

名前を呼ぶだけなのに、これが最初で最後になるなんて。

哀れなことに、私はただ、待ってという言葉しか出てこなかった。

おかしいほどに同じ言葉を繰り返して、頭がパニック状態になっていく。

冷静でなんかいられるわけがなかった。

真夜中だから、人もいない。

私だけ、取り残されてしまったような感覚が身に染みる。

あぁ、どうしよう。

とりあえず、救急車。

こんな状態で救急車を呼べたことですら、自分を褒め称えたいぐらいだった。

電話をしたその後はどうしたのか、もう自分でも覚えていない。