一本目。触れたブロックは、なんの抵抗もなくスッと、向こう側へ押し出された。
余裕でてっぺんに乗せて、うさぎ先生にバトンタッチ。

先生が触れた二本目も問題なくクリアした。

「今日はお仕事の後、予定とか大丈夫だったんですか」

三本目。中断くらいの真ん中に触れたらちょっとだけ固くて、左右のブロックにぶつかって斜めにしながらなんとか成功。

「うわっ!落ちる!?落ちる!?」って笑いながら煽ってくるうさぎ先生が子どもみたいに無邪気だった。

「大丈夫だよ。千鶴ちゃんは居残りだったんだって?」

「そうなんです。国語の漢字の宿題、忘れちゃってて。で、その後…ごめんなさい。友達に誘われて、ちょっとくらいならいいかなって遊んじゃってました」

「正直者だねぇ、千鶴ちゃんは」

「待っててくれてる人が居るのにごめんなさい」

四本目、先生が触れるブロックはやっぱりなんの変化も起こさない。

先生の雰囲気に似ている。
どこに触れてもやわらかくて、でも土台がしっかりしているから絶対に揺らいではくれない。

悔しくて、私を「小夏のお姉ちゃん」以外で見てほしくて押してみるけれど、
先生の中の私は「園児の保護者」の域を超えてはくれない。