「ごめんなさいっ!遅くなりましたっ…!」

ゼェゼェと乱れた呼吸を整えようと肩を上下させながら思いっきり酸素を吸ったら、ちょっと視界がクラッとした。

閉園後の保育園は教室以外の電気が消されていて、室内だけがぼんやりと浮かび上がっているみたいだった。

千鶴(ちづる)ちゃん、お疲れ様」

「うさぎ先生ごめんなさい!遅くなってしまって…」

「しょうがないよ。ちゃんと連絡くれたしオッケーです」

「他の先生は帰られたんですか?うさぎ先生を残しちゃってごめんなさい」

「まだ職員室で作業してる先生も居るよ。てかそんなこと、保護者さんが気にすることじゃありません。それより小夏(こなつ)ちゃん、眠ちゃってるんだ。抱えて帰るのはきついだろうからちょっと休んでけば?千鶴ちゃん、走って来たんでしょ」

そう言われたことを合図みたいに、額を一筋の汗がスーッと流れていくのを感じて慌ててハンカチで拭った。
ついでに乱れているであろう前髪も整える。

最悪だ。
こんな姿をうさぎ先生に見られてしまうなんて。