反射的に足を止めたものの、振り返りたくない。
それは、本能的な感覚だった。
「やっぱり辻山さんじゃないか」
ところが、私の気持ちを余所に、声の主が目の前に回り込んでくる。
俯きかけていた私の視界に入ってきたのは、中郷課長だった。
「課長……」
「やめてくれよ。俺はもう君の上司じゃない」
ふっと笑った課長は、どこか感傷的にも見える。
ただ、今の私には中郷課長の気持ちなんてどうでもいい。
課長からは、先月の【会いたい】というメッセージのあと、【食事でも行かないか?】と【返事くらい欲しいな】と送られてきた。
そして、幸いにも今月はまだ一度も連絡がなく、もしかしたらこのままフェードアウトできるのでは……という期待が大きくなりつつあった。
それなのに、このタイミングで会ってしまうなんて……。
「結婚式でもあったのか?」
事情を探ってくる中郷課長の前から逃げたくてたまらないけれど、ずっとメッセージを返していなかったから、逆上されないとも限らない。
そう思うと、なにも言わずにこの場から離れるのも怖かった。
「その……知人のパーティーに……」
「パーティー? さっきエレベーターから降りてきたところを見かけたから待ってたんだが……一緒にいた男と出席してたのか?」
待ち伏せされていたのだと知り、背筋がぞわっ……と粟立つ。
侑李さんと一緒にいたことも知られているのなら、中郷課長にはこれ以上関わらない方がいい。
そう思い、勇気を振り絞って口を開いた。
それは、本能的な感覚だった。
「やっぱり辻山さんじゃないか」
ところが、私の気持ちを余所に、声の主が目の前に回り込んでくる。
俯きかけていた私の視界に入ってきたのは、中郷課長だった。
「課長……」
「やめてくれよ。俺はもう君の上司じゃない」
ふっと笑った課長は、どこか感傷的にも見える。
ただ、今の私には中郷課長の気持ちなんてどうでもいい。
課長からは、先月の【会いたい】というメッセージのあと、【食事でも行かないか?】と【返事くらい欲しいな】と送られてきた。
そして、幸いにも今月はまだ一度も連絡がなく、もしかしたらこのままフェードアウトできるのでは……という期待が大きくなりつつあった。
それなのに、このタイミングで会ってしまうなんて……。
「結婚式でもあったのか?」
事情を探ってくる中郷課長の前から逃げたくてたまらないけれど、ずっとメッセージを返していなかったから、逆上されないとも限らない。
そう思うと、なにも言わずにこの場から離れるのも怖かった。
「その……知人のパーティーに……」
「パーティー? さっきエレベーターから降りてきたところを見かけたから待ってたんだが……一緒にいた男と出席してたのか?」
待ち伏せされていたのだと知り、背筋がぞわっ……と粟立つ。
侑李さんと一緒にいたことも知られているのなら、中郷課長にはこれ以上関わらない方がいい。
そう思い、勇気を振り絞って口を開いた。



