契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

『それに、私も那湖が来てくれたら助かるからね。もちろん試用期間も設けるけど、那湖なら戦力になってくれるはずだもの』
「ありがとう!」


 戦力になると思ってもらえていることが嬉しい。
 声を弾ませたけれど、さっちゃんは「でもね」と真剣な声色になった。
 思わず背筋を伸ばし、少しだけ緊張しながら次の言葉を待つ。


『身内だからって甘やかさないからね。バイトとは違うんだし、社員としての責任感は持ってもらうわよ』
「それはもちろん! ちゃんと厳しくしてほしいし、スタッフさんたちにさっちゃんの身内だから甘いって思われないようにするよ!」


 社会人としても、慕っているさっちゃんの迷惑になりたくないという意味でも、きっと誰よりも真面目に働くべきだ。
 力強く返したあとで、そう肝に銘じた。


『それと、もうひとつ』


 さきほどよりも厳しくなった声音に、つい息を呑んでしまう。


『自分が悪くないのに犠牲になるような形で物事を諦めるのは、絶対にやめなさい。私はそんな自己犠牲は嫌いだし、なにより那湖が悪く思われるのも嫌よ』


 身構えていた私は、厳しくも温かい言葉に唇を噛みしめた。
 同時に、深雪からすべてを聞いたんだ……と察する。