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あれから二週間ほどが経った、十二月中旬。
侑李さんとは顔を合わせる時間がないまま、アーサー・椎名法律事務所の創立記念パーティーの日を迎えてしまった。
あの日を境に、彼は以前にも増して仕事が忙しくなったようだ。
家政婦として侑李さんの家を訪れた日は、土日であっても会うことはなかった。
食事を摂る時間もないのか、今週に入ってからは料理は不要だと言われている。
そんな中、パーティーに同伴するなんて不安しかない。
ただ、今日ばかりは彼も時間を作ってくれることになっている。
以前に侑李さんが購入してくれたドレスに着替えて家で待っていると、彼がタクシーで迎えに来てくれた。
「サロンに寄ったあと、ホテルに向かう。時間はまだ余裕があるから、もし足りないものがあれば遠慮なく言ってくれ」
「いえ、大丈夫です」
ドレスも、靴も、バッグも、ジュエリーも、必要なものはすべて揃えてもらった。
その上、これから向かうヘアサロンも、侑李さんが予約してくれた。
コートだけは自前だけれど、これはクロークで預けるから問題ないだろう。
タクシーで向かったお店は、会場まで車で三分もかからない場所にあった。
店内は広々としているのに、シャンプー台を除くと三席しかない。
スタッフは三人いて、そのうちひとりはアシスタントのようだ。
彼はよく通っているのか、男性のスタイリストさんと親しげに話している。
どうやら、ここの店長みたい。



