契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

「今、風呂を沸かした。すぐに湯が溜まるから入ってくるといい」
「いえ、そんな……!」
「いいから、その状態だと電車に乗れないぞ。服は俺のものを貸すから、乾燥機にかけておくといい。一時間もすれば乾くだろ」


 タオルと一緒に取ってきたらしい着替えを差し出されたけれど、私は受け取ることができなかった。
 ただ、彼の言うことはもっともで、この状態では電車は使えない。


「では、せめて先に櫻庭さんが……」
「俺はフィットネスルームのシャワーを使うから」
「でも……」
「那湖」


 不意に、名前で呼ばれたことに鼓動が跳ね上がる。
 真っ直ぐな目が拒否を許さないと言うようで、私はたじろぎつつも頷いていた。


「バスルームや脱衣所にあるものは、なんでも好きに使ってくれて構わない。バスタオルやドライヤーの場所はわかるな?」


 私が「はい」と答えると、侑李さんが瞳をわずかに緩めた。
 彼は私を脱衣所に押し込めると、「俺も行ってくる」と言って玄関の方へ向かった。


 この家でひとりで過ごすのは、もう何度目かわからない。
 けれど、お風呂を借りるのは初めてのこと。
 いつもとはまったく違うシチュエーションで、さらには全裸になるわけで……。侑李さんが家にいないとはいえ、冷静じゃいられない。
 ずぶ濡れになったことで忘れかけていた緊張感が再び戻ってきて、それどころかさきほどよりもずっと大きくなっていった。