契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

「でも、さっきスイーツのメニューを見てただろ? 遠慮しなくていい」


 侑李さんの婚約者にふりをすることになって、早半月。
 すでにプライベートでも数回会い、彼の提案でお互いを名前で呼ぶようになった。
 まだ慣れない私に反し、侑李さんは一度でスムーズに呼び、もうすっかり板についている……という感じだ。


「確か、ティラミスが好きと言ってたな。この店の名物らしいから食べないか?」


 そして、たった半月だというのに、彼はとても変わった。
 たとえば、以前から付き合っているかのように名前を呼んだり話したり。
 今のように私のさりげない言動もよく見て、スイーツが気になっていたことを見抜いたり。
 ちょっとした会話でも、きちんと覚えていてくれたり。


 ティラミスが好きだという話なんて、ドレスを買いに行った車内でなにげなく口にした程度で、私ですらそう言ったことを忘れていたのに……。


「じゃあ、お言葉に甘えて。侑李さんはなにか召し上がられますか?」
「いや、俺はいい」


 侑李さんは微笑を浮かべて答えると、ウェイターを呼んでティラミスを注文した。
 彼のこんな表情を見るのも、もう何度目だろうか。
 一緒にいると、こうして笑いかけられることが何度もあって少しだけ戸惑う。


 初対面の侑李さんは、冷たそうな雰囲気を纏っていた。
 けれど、今の彼からはそういった空気を感じない。
 私のことをよく見ていて、さりげない優しさでエスコートしてくれる。
 ただ、こうして優しくされるのは嬉しい反面、時に勘違いしてしまいそうになっている自分がいて……。そのたびに、自分を律するように言い聞かせていた。