契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

(さっちゃん? どうしたんだろ?)


 珍しい人からの連絡を怪訝に思いつつ、通話ボタンをタップする。


「もしもし」
『那湖? 久しぶりね』


 電話口から聞こえてきたのは、よく知った明るい声だった。


「うん、久しぶり。元気にしてる?」
『元気よ。毎日忙しいおかげで、風邪をひく暇もないわ』


 冗談めかした言い方に、クスッと笑ってしまう。
 幼い頃から『さっちゃん』と呼んで慕っている叔母は、離婚後に一人娘の深雪(みゆき)を育てながら起ち上げた会社を成功させた。
 厳しいところもあるけれど、明るく前向きでパワフルな人だ。


 深雪は私と同い年で昔から仲が良く、定期的に会っている。
 ただ、多忙なさっちゃんとは半年ほど顔を合わせていなかった。


『昨日、深雪と会って聞いたんだけど、会社辞めたんだって?』
「うん、ちょっと色々あって……」
『事情も軽く聞いてるわ。それで? 次の仕事は見つかったの?』


 痛いところを突かれて、苦笑を漏らしてしまう。
 あまり言いたくないことだけれど、さっちゃんには素直に話そうと思えた。