契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

「まずは、那湖の再就職にかんぱーい! おめでとう!」
「ありがとう」


 彼女と合わせたグラスに、口をつける。
 よく冷えたシャンパンが、まだ真夏のような日中の気温で疲れた体に染み渡る。
 同じものを飲んでいる深雪も、「おいしい~!」と噛みしめるように言った。


「それにしても、よくお母さんのところで働く気になったよね。シングルで育ててくれたお母さんには感謝してるけど、仕事に関しては超厳しいから私は無理だなぁ」


 しみじみと話した彼女がバイト時代によく注意を受けていたことを思い出し、ふふっと笑ってしまう。


 さっちゃんが深雪に特に厳しかったのは、娘だから……というのもあるだろう。
 ただ、それよりも問題だったのは、深雪に少しばかりズボラなところがあることだったんじゃないかと思う。


 今でこそ、彼女の家は綺麗に整頓されている。
 けれど、まだ実家に住んでいた頃は部屋が散らかっているのは日常茶飯事で、掃除も得意とは言えなかった。


 掃除機をかけると部屋の角の埃を吸えていなかったり、窓や鏡を拭くと拭き跡が残っていたり……。そういうところが、業務でも出ていたのだ。
 家政婦としては、死活問題。


 結局、深雪は『私には向いてない』と言って、一か月でバイトを辞めた。
 もっとも、その後に始めた花屋でのバイトを機に、今はフラワーデザイナーとして独立することを目標に頑張っているから、彼女の選択は正しかったに違いない。