八月初旬の真昼間の街は、若者が多く活気に溢れていた。
 暑さを気にせずに寄り添うカップルたち、部活帰りらしき制服姿の女子高生、賑やかなギャルの集団。
 みんな、とても楽しそうに笑っている。
 反して、私は降り注ぐ太陽の熱に心も体もじりじりと焼かれていくようだった。


(転職って、思ってたよりずっと厳しいんだな……)


 私の唇から零れた深いため息は、喧騒にかき消されてしまう。
 たくさんの人たちの中で、私だけが世界から取り残されたように思うのは気のせいだとわかっている。
 けれど、無職というだけで心細く、先行き不安でしかない。
 くたびれた表情のサラリーマンですら、今の私には羨ましかった。


(仕事を辞めたのは、やっぱり間違いだった……?)


 ふとそう感じたけれど、慌てて首をぶんぶんと横に振る。


(ううん、そんなことない! だって、もし辞めてなかったらもっと大ごとになってたかもしれないし……。今は大変でも、辞めたことは間違いじゃないはず)


 まるで自分自身に言い聞かせるように、心の中で強く言う。
 そうしなければ、茹だるような暑さと未来への不安の渦に飲み込まれてしまいそうだったから……。