契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

 赤坂見附駅から四谷三丁目駅に戻り、徒歩七分ほど。
 住宅街に続く路地の角のビルに、花本パートナーサービスのオフィスがある。
 五階建ての四階フロアまでエレベーターで上がり、ガラス張りのドアを開けた。


「ただいま戻りました。これから報告書を——」
「那湖! すごいじゃない!」


 私がフロアに入るなり、さっちゃんが飛んでくる。
 その満面の笑みからはいいことがあったのだと察しつつも、なにが『すごい』のかはわからなかった。


「櫻庭さんから次の予約と指名をもらえたわよ!」
「えっ?」
「絶対に今回限りで断られると思ってたのに、那湖の仕事を褒めてたわよ! 『すごく気が利くし、こちらの要望以上の働きぶりだった』って! 櫻庭さんは若い女性は断固拒否されてたのに、本当になにをしたの?」
「えっと……私は時間いっぱいまでできるだけの仕事をしてきたくらいですが……」


 会社内であることから敬語で答えながらも、心当たりがなくて小首を傾げてしまう。
 周囲にいた同僚たちからも褒められる中、驚きを隠せなかった。


 だって、最後まで櫻庭さんの態度からは次があるなんて微塵も感じなかったのだ。
 ただ、分厚い壁があるように見えた彼が、また私に依頼してくれたことは嬉しい。
 事情はわからないけれど、私の仕事を見て認めてくれたということだと思うから。


「とにかく次からも頼むわよ! これまで通り、週三日の依頼だから」
「はい」


私はまだ半信半疑ながらも頷き、櫻庭さんの役に立てるように頑張ろうと思った。