契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

 朝九時にここに来て、今は十三時を過ぎたところ。
 櫻庭さんとの契約は五時間だから、まだ五十分ほど残っている。


「時間に余裕がありそうでしたので。余計なことでしたら申し訳ございません」
「いや、ありがたいが……」
「では、他になにかありませんか? ご近所でしたら買い物なども承れますが」
「大丈夫だ」


 彼はきっぱりと言い切ったけれど、眉を軽く寄せてなにかを考えるような顔をしたあとで口を開いた。


「軽く食べられるものを準備してもらうことは?」
「買い物と調理の両方は難しいので、食材があれば可能です。こちらにあるものでご用意しましょうか」
「じゃあ、お願いしたい」
「承知しました」


 快諾して苦手なものやアレルギーの有無を確認したところ、「特にない」と言われてメニューも任された。
 ところが、ひとまずキッチンに行った私は、途方に暮れそうになった。


 冷蔵庫はドリンク類ばかりで、他はお米が入ったケースと卵が一個だけ。
 食パンや生ハム、チーズやナッツはあるけれど、冷凍庫に至っては氷くらい。
 立派なパントリーにも、パスタしかない。
 高級そうな調味料やキッチン用品に反して、まともな食材が見当たらなかった。