契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

(結局、ギリギリになっちゃった……)


 会計を済ませて外に出ると、もうすっかり暗くなっている。
 大通りには多くの人が行き交っているけれど、侑李さんのマンションに近づくにつれて人通りが減っていった。


「あの……」


 まだどう切り出そうか考えていた私は、不意に背後から声をかけられて振り向く。


「ちょっとお訊きしたいんですが……」


 女性の声だったから、警戒心なんてほとんどなかった。


「はい」


 だから、ナイフが自分に向けられていることに気づくのが遅れ、すぐ傍まで女性が近づいてきても笑顔でいた。
 夜空の下、街灯で照らされた銀色のものがギラリと光る。


「えっ……ッ?」


 異様な光を放つそれを目の前で突き付けられ、声も出ないほどの恐怖を抱いて体が硬直した。


「あなた、侑李さんのなに? 最近、特によく一緒にいるわよね?」


 はっ……と、息を吐く。
 自然と呼吸を止めていた私は、本能でこの女性が彼が以前雇っていた例の家政婦なのだと悟った。


「わ、私は……」


 相手を刺激しない答えを探しながら、さりげなくバッグを下腹部の前に寄せる。
 運悪く、周囲に人の姿はない。
 恐らく、彼女は私がひとりになる機会を窺っていたのだろう。