契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~


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 八月上旬の土曜日。
 昨日の晴れやかな空から一転、どんよりとした雲が広がっている。
 私はあれから一週間の試用期間を経て、無事に花本パートナーサービスで正社員として雇ってもらえることになった。
 今日はその初日だ。


 試用期間の研修は、バイトの時よりも厳しかった。
 けれど、やり甲斐や楽しみを感じたのは相変わらずで、この一週間は本当に充実していたし、勘もだいたい戻っている。
 さっちゃんからも、試用期間中に一緒に業務に入ったスタッフたちからも、太鼓判を押してもらった。


 というのに、私の心の中は不安でいっぱいだった。
 その理由は正社員になって初日だからとか、ひとりでお客様の家に訪問するのがバイトの時以来だから……ということだけじゃない。


 今日の依頼主の櫻庭さんは、『若い女性スタッフは避けてほしい。女性スタッフなら五十代以上』という要望がある——とさっちゃんから聞いたからだ。
 三年前からうちを利用している彼は、その一点を重要視しているのだとか。


 さっちゃんも要望を汲み、最初は男性のバイトスタッフを、一年前からは五十代の女性スタッフを専属で派遣していた。
 ところが、その女性が親の介護のために退職したのだ。