契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~

「はい。本当にありがとうございました」
「どういたしまして。さあ、こっちに座って」


 艶のある黒いローテーブルに促され、侑李さんと肩を並べて腰を下ろす。
 ワンピースを着てきた私が正座をすると、所長が「足は崩していいからね」と優しい笑顔で言ってくれた。


 お酒を勧められたけれど、実は昼過ぎから体調がいまいち優れなくて……。緊張のせいかお酒を飲むのは不安なため、丁重にお断りさせてもらう。
 もちろん、体調のことは伏せた。
 侑李さんと所長は日本酒を選び、私はウーロン茶で乾杯をした。


「改めて、結婚おめでとう。いよいよだね」


 侑李さんと口々にお礼を言い、グラスに口をつける。
 程なくして、料理が運ばれてきた。
 部屋には女将がついてくれるようで、一品ずつ説明されていく。


 いくらが載ったアワビの焼霜、カニしんじょの菊花添え。
 それらを味わっている間に、フグを始めとした数種類の刺身の盛り合わせが並ぶ。


「那湖さんはあまり苦手なものはないと聞いてるけど、食べられないものがあれば遠慮なく言ってね」
「ありがとうございます。どれもとてもおいしいです」
「それはよかった。ここは私の知人がやってるお店でね、特別な人をお祝いする時に連れてくることにしてるんだ」


 お茶目にウインクされて、少しだけ緊張が解れる。
 そのまま他愛のない話が続き、しばらくして八寸が運ばれてきた。


 八種類の品がひとり分ずつ美しく盛られた料理は、目にも鮮やかで味もとんでもなくおいしい。
 体調が優れないはずなのに、自然と箸が進んでいく。
 会話も弾み、所長は特に私たちを疑う様子もないまま和やかな雰囲気が続いた。